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銀行をはじめ住宅ローンを提供する金融機関の多くが、「団体信用生命保険(団信)」への加入を義務付けています。
健康上の理由などで保険に加入できなければ、住宅ローンの契約はできません。
「持病のある人は住宅ローンを利用できない」というのが、金融機関の解釈なのです。
しかし、あきらめるのは早いです。
持病のある方でも住宅ローンを借り入れる方法がいくつかあります。
健康に不安がある方は、こちらの記事を参考に検討してみましょう。
【住宅ローンが利用できない病気とは】
一般的な生命保険に加入するときは、保険会社の規定に基づいて、現在の健康状態を申告することになっています。
団体信用生命保険に申し込む際も同じく、健康状態の申告が必要です。
このことを「告知事項の申告」といいます。
告知事項では、現在治療を続けている病気はもちろん、過去3ヵ月以内に治療した病気や、過去3年以内の病歴、さらに投薬の有無などを申告する必要があります。
病歴に関しては、申告が必要な病名を列挙した告知書に該当のものをチェックするのが一般的です。
病名は保険会社によっても若干異なりますが、主に以下のようなものが挙げられます。
- 告知が必要な疾患の例
心臓の疾患 | 狭心症/心筋梗塞/心臓弁膜症/先天性心臓病/心筋症/高血圧症/不整脈など |
胃腸の疾患 | 胃潰瘍/十二指腸潰瘍/潰瘍性大腸炎/すい臓炎/クローン病など |
肝臓・すい臓の疾患 | 肝炎/肝硬変/肝機能障害/すい炎など |
腎臓の疾患 | 腎炎/ネフローゼ/腎不全 |
眼の疾患 | 緑内障/網膜や角膜にまつわる疾患 |
代謝異常・免疫疾患 | 高血圧症/糖尿病/紫斑病など |
婦人科系の疾患 | 子宮内膜症/乳腺症/卵巣のう腫など |
呼吸器の疾患 | 喘息/慢性気管支炎/肺結核/肺気腫など |
脳の疾患 | 脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)/脳動脈硬化症など |
精神疾患 | うつ病/神経症/てんかん/アルコールや薬物依存症/認知症など |
その他 | がん/肉腫/白血病/腫瘍/ポリープ/手・足の欠損または機能障害/視力や聴力、言語、そしゃく機能の障害など |
これらの病名に該当する告知事項が一つでもある場合は、その病名と投薬期間、手術日や入院日数、現在の状況などの情報も詳細に伝える必要があります。
保険会社によっては、病状や治療状況の詳細を確認するために、医師の診断書を求められることがありますので、そのときは、すみやかに治療を受けた医師へ依頼して診断書を書いてもらいましょう。
【病歴があると審査に通らない?】
最初にもお伝えしましたが、「持病のある人は住宅ローンを利用できない」という考え方が、金融機関にはあります。
しかし、住宅ローンを利用できる疾患かどうかは、保険会社が判断することです。
保険会社が「この人は大丈夫」と判断し、他に審査に引っかかる点がなければ、金融機関の審査に通ります。
問題は、「保険会社がどのように判断するか」という点です。
保険会社では、病名や病歴だけを見て審査しているわけではありません。
現在の症状や治療状況といった「経過」も重視しています。
たとえば、高血圧症の持病がある方の場合、定期的に通院して診断を受け、降圧剤などの薬で治療に努めていると認められたら、保険に加入できる可能性が高まります。
このように、現在の症状や治療状況が審査によい影響を与えることもありますので、病気を隠すことなく正直かつ詳しく伝えることが大切です。
正直に申告しなければ「告知義務違反」になることも
「持病を伝えると審査に悪い影響を与えるのではないか」と、病気を隠して申告しようと考えている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、病気を隠すと虚偽の内容を報告したとして「告知義務違反」とみなされます。
違反が認められたら保険は解約されますし、保険金も支払われません。
これは、契約者が亡くなった後にもいえることです。
契約者が亡くなると、保険会社では契約者の健康保険の履歴や通院歴などを調査します。
その際に、隠していた病気が発覚して告知義務違反だとみなされたら、保険金は支払われません。
保険金が支払われなければ住宅ローンの返済は残りますから、それを家族が引き継ぐことになります。
「黙っていればわからない」という安易な考えが、家族に多大な借金を背負わせることになりかねませんから、持病がある場合は正直に答えることが大切です。
【団信に加入できなかったときの対処法】
団体信用生命保険に加入できないことが理由で、住宅ローンの審査に通らなかった場合でも、住宅ローンを利用する方法はいくつかあります。
健康上の理由で審査に通るか不安な方も、以下の方法を検討してみてはいかがでしょうか。
保険会社を変更する
団体信用生命保険の審査基準は、保険会社によって異なります。
ある保険会社では審査に通らなくても、別の保険会社であれば通る可能性があるのです。
そこで、まず金融機関が提供する団体信用生命保険の会社をチェックします。
審査に通らなかった金融機関と同じ保険会社に申し込んでも、また落ちる可能性が高いため、別の保険会社の商品を提供している金融機関で住宅ローンを申し込んでみましょう。
同じ疾患でも、会社が変われば通る可能性があります。
ワイド団信を利用する
一部の金融機関で提供している「ワイド団信」に加入できれば、住宅ローンを利用できます。
ワイド団信とは、健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない方を対象に、基準を緩和して加入しやすくした保険のことです。
正式には「加入条件緩和割増保険料適用特約付団体信用生命保険」といいます。
一般的な団体信用生命保険では加入が難しいとされる疾患(糖尿病、うつ病、心筋梗塞、脳卒中、肝炎など)を持っている方でも、ワイド団信なら引き受けられる可能性があります。
取り扱いのある金融機関は限られるため、健康上の不安を抱えている方はあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
なお、ワイド団信も金利から保険料が支払われますが、通常の団体信用生命保険より金利が0.2~0.3%ほど高くなる傾向があり、トータルの返済額が増えることには注意が必要です。
また、ワイド団信でも加入を断られるケースがあることも認識しておきましょう。
配偶者名義で住宅ローンを申し込む
自分が保険に加入できないのであれば、配偶者に住宅ローンを申し込ませるという手法もあります。
配偶者が健康であり、かつ安定した収入があることを前提とした方法ですが、もし収入の面で不安がある場合は、連帯債務型または連帯保証型といった夫婦の収入を合算できる住宅ローンで契約するのも一手です。
連帯債務者や連帯保証人も金融機関の審査対象になりますが、団体信用生命保険に加入しなくても良い(連帯保証人はそもそも保険に加入できない)契約法であるため、住宅ローンを利用できるチャンスは広がります。
団信への加入が任意のローンを利用する
団体信用生命保険への加入を義務付けていない住宅ローンもあります。
その代表例が、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」です。
フラット35は、収入(返済負担率)と建物の性能に関する要件を満たせば、勤続年数や雇用形態などを問わず利用できる住宅ローンです。
民間金融機関の住宅ローンと比べて、審査基準が厳しくなく、比較的に通りやすい商品といわれます。
フラット35でも「機構団信」という団体信用生命保険を用意していますが、加入は任意です。保険に加入しなくても、住宅ローンが利用できます。
このため、健康上の理由で他の住宅ローンでは審査に通らなかったという方でも、フラット35なら契約できる可能性はあるでしょう。
【団信の告知義務に関するよくある疑問】
保険に詳しい方を除き、一般の方には難しい内容も多いため、さまざまな疑問を抱かれることがあると思います。
ここで、団体信用生命保険の告知義務に関するよくある疑問や質問と、その回答をまとめましたので、参考までにご一読ください。
治療を終えた疾患も告知しなければならないの?
告知の必要がある告知事項には、「直近3ヵ月以内に治療や投薬を受けた病気」と「告知書に該当する傷病歴について、過去3年以内に手術を受けた病歴または2週間以上の投薬があった病歴」は、すべて伝えなければなりません。
治療を終えたものでも、上記に該当する場合は告知が必要です。
告知書に記入し忘れた病名がある場合、口頭で伝えても大丈夫?
口頭では告知したことにはなりませんから、再告知する必要があります。
保険会社の審査担当者は、申込者と直接話す機会はありませんし、金融機関の担当者が口頭で伝えることもありません。
あくまで書類上の告知書で内容を確認・審査しますから、書き忘れがあった場合はすみやかに金融機関の担当者へ申し出ましょう。
告知後に病気が判明した場合、再告知は必要?
告知書に記載する内容は、告知日時点の情報です。
その後に判明した病気に関しては、再告知する必要はありません。
ただし、記入漏れなどにより再告知するときまでに病気が判明したら、その内容を記載する必要があります。
健康診断の結果を提出する必要はある?
保険会社の審査で、健康診断書を求められることは、基本的にはありません。
ただし、特約を付ける場合や借入額が大きい場合など、一定の条件に当てはまるケースでは、健康診断書の提出を求められることがあります。
【まとめ】
住宅ローンの審査において、収入や借入可能額などを気にされる方は多いですが、団体信用生命保険に加入できる健康状態であることも重要なポイントです。
健康上の理由で保険への加入に不安がある方は、加入条件が緩和されたワイド団信の利用や、保険への加入が任意の住宅ローンを検討するなど、対策を練る必要があります。
たとえ審査に通らなくても、ほかの保険会社に申し込むといった手段もあります。
あきらめずに次の一手を考え、自分に適した住宅ローンを探すことが大切です。
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